2026.07.28

第五次循環型社会形成推進基本計画をわかりやすく解説|循環経済への移行と企業・自治体が知るべきポイント

第5次循環型社会形成推進基本法をわかりやすく解説します

はじめに|日本の「ごみ・資源政策」が大きく変わりました

 

2024年8月、日本の廃棄物・資源循環政策の方向性を定める重要な計画が閣議決定されました。それが「第五次循環型社会形成推進基本計画」です。

「なんだか難しそうな名前だな」と感じる方も多いかもしれません。しかし、この計画は今後の日本のリサイクル・廃棄物処理・資源循環のあり方を大きく左右する、非常に重要な国家戦略です。

企業の経営者や環境担当者はもちろん、自治体の職員、そして「サーキュラーエコノミー」に関心のある個人の方にとっても、知っておく価値のある内容です。

この記事では、第五次循環型社会形成推進基本計画の目的・背景・重点分野・数値目標・今後の影響について、専門用語をできるだけかみ砕きながら、わかりやすく解説していきます。

 

参考:「ごみ」を「資源」へ転換する経済モデル!サーキュラーエコノミー実現に向けた業界の最新戦略

 


第五次循環型社会形成推進基本計画とは何か

 

そもそも「循環型社会形成推進基本計画」とは

この計画は、循環型社会形成推進基本法という法律に基づいて策定される国の基本計画です。

日本では、ごみを減らし、資源を有効に活用する社会をつくるために、この法律のもとで定期的に基本計画が見直されています。今回の計画は、その5回目の見直しにあたるため「第五次」と呼ばれています。

計画は、国がこれから進める循環型社会づくりの方向性、重点的に取り組む分野、達成すべき数値目標などをまとめたものです。地方自治体や企業の環境政策にも大きな影響を与えます。

 

第五次計画のいちばんの特徴

これまでの計画は、主に「3R(リデュース・リユース・リサイクル)の推進」や「廃棄物の適正処理」が中心でした。

しかし第五次計画では、これに加えて「循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行」を国家戦略として明確に打ち出した**点が最大の特徴です。

つまり、単に「ごみを減らそう」「リサイクルしよう」という話にとどまらず、

製品の設計段階からごみが出ない仕組みを考える

・廃棄物を「価値ある資源」として経済に組み込む

・循環経済を新たな成長分野・産業として育てる

という、より踏み込んだ、経済戦略としての側面が強く打ち出されています。

 


なぜ今、この計画が必要なのか|4つの背景

 

背景①:資源制約と海外依存リスク

日本は多くの資源を海外からの輸入に頼っています。国際情勢の変化によって資源の確保が難しくなるリスクが高まる中、国内にある廃棄物を「都市鉱山」として活用し、資源を国内で循環させる仕組みが重要になっています。

 

背景②:大量生産・大量消費・大量廃棄からの転換

これまでの「つくって、使って、捨てる」という一方通行型の経済(リニアエコノミー)は、資源の枯渇や環境負荷の増大を招いてきました。この構造そのものを見直す必要性が高まっています。

 

背景③:気候変動対策・ネイチャーポジティブとの一体的推進

廃棄物の削減や資源の循環利用は、CO₂排出量の削減(カーボンニュートラル)にも直結します。また、生物多様性の回復(ネイチャーポジティブ)の観点からも、循環型社会づくりは欠かせないテーマです。

 

背景④:人口減少社会における新たな成長戦略

人口が減少していく日本において、循環経済は単なる環境対策ではなく、新しい産業・雇用を生み出す成長分野として期待されています。地域の資源を活用したビジネスは、地方創生にもつながる重要な要素です。

 


第五次計画における5つの重点分野

 

第五次循環型社会形成推進基本計画では、今後取り組むべき重点分野として、以下の5つの柱が示されています。

 

重点分野①:循環経済への移行による持続可能な地域・社会づくり

循環経済への移行を通じて、地方創生・産業競争力の強化・経済安全保障・質の高い暮らしを同時に実現していくという方向性です。

地域の中で資源が循環する仕組みや、地産地消型の資源利用が重視されます。自治体にとっては、資源回収・リユース・リサイクル・地域エネルギー利用を一体的に考えることが求められます。

 

重点分野②:事業者間連携によるライフサイクル全体での資源循環

製品の設計・製造・流通・使用・回収・再資源化まで、ライフサイクル全体を通じて資源を循環させるという考え方です。

企業にとっては、自社だけで完結するのではなく、サプライチェーン全体で連携することが重要になります。再生材の利用拡大、容器包装の見直し、回収スキームの構築、製品の長寿命化などが具体的な取り組みとして挙げられます。

 

重点分野③:地域の特性に応じた資源循環の推進

地域によって発生する廃棄物の種類や量は大きく異なります。そのため、全国一律の対応ではなく、地域の特性に応じた資源循環モデルを構築することが必要とされています。

農業地域では食品残さやバイオマス、都市部ではプラスチックや古紙、商業地域では事業系廃棄物など、地域ごとの重点課題に応じた取り組みが求められます。

 

重点分野④:資源循環・廃棄物管理基盤の強靱化と適正処理・環境再生

資源循環を支える大前提として、適正な廃棄物処理体制の強化が欠かせません。不法投棄や不適正処理を防止し、災害時にも機能する強靱な処理基盤を整えることが重視されています。

また、処理するだけでなく、土壌・水質・自然環境の回復まで含めた「環境再生」の視点も、この分野の重要な要素です。

 

重点分野⑤:適正な国際資源循環体制の構築と循環産業の海外展開

資源循環は国内だけで完結する話ではありません。再生資源の輸出入のルール整備や、国際的な廃棄物管理の枠組みづくり、日本の循環産業の海外展開支援なども重点分野に含まれています。

これは、日本企業が持つ高度なリサイクル技術・循環型ビジネスモデルを海外市場に展開していく上でも、重要な政策的支援となります。

 


数値目標から見る計画の具体性

 

第五次循環型社会形成推進基本計画のもう一つの特徴は、明確な数値目標が設定されている点です。数値目標があることで、進捗状況を客観的に評価でき、企業や自治体も自分たちの目標設定の参考にしやすくなります。

 

代表的な目標には、以下のようなものが示されています。

指標 目標の方向性
資源生産性 2015年度比で大幅に向上させることを目指す
循環利用率 入口側・出口側それぞれで向上を目指す
最終処分量 大幅な削減を目指す
プラスチックの資源循環 有効利用率のさらなる向上を目指す

これらの指標は、単なる努力目標ではなく、国全体・産業全体で達成を目指す方向性として位置づけられています。

 


この計画は誰にどう関係するのか

 

企業にとっての意味

企業にとって、この計画は経営環境そのものが変化するシグナルです。

・廃棄物の削減・再資源化は、これまで以上に経営上の重要課題になります

・製品設計の段階からリサイクルのしやすさを考える必要が出てきます

・サプライチェーン全体での連携・情報共有が求められます

・ESG評価やサステナビリティ情報開示の重要性がさらに高まります

「廃棄物処理は総務や環境部門の仕事」という位置づけではなく、経営戦略・事業戦略の一部として捉え直すことが求められる時代になっています。

 

自治体にとっての意味

自治体にとっては、住民サービスとしての廃棄物処理に加え、地域経済と資源循環を結びつける政策立案が重要になります。

・ごみの減量だけでなく、資源を地域内で循環させる仕組みづくり

・地域の産業・農業・観光と連携した資源活用

・住民・学校・企業と一体となった啓発活動

・民間のリサイクル事業者との連携強化

廃棄物行政の担当部署だけでなく、産業振興部門や教育部門とも連携しながら、総合的に取り組むことが効果的です。

 

個人・家庭にとっての意味

個人にとっても、この計画は無関係ではありません。国の政策が変わることで、今後は次のような変化が身近に起こってくると考えられます。

・分別ルールの見直しや細分化

・製品パッケージのリサイクルしやすい素材への変更

・リユース・シェアリングサービスの拡大

・詰め替え製品や長寿命設計の製品の増加

日常のちょっとした行動—丁寧なごみの分別、リユースショップの活用、長く使えるものを選ぶ意識—が、国全体の循環型社会づくりにつながっていきます。

 


3R政策から循環経済政策への転換点

 

これまでの日本の環境政策は、「3R(リデュース・リユース・リサイクル)」という考え方を中心に進められてきました。

第五次計画は、この3Rの重要性を否定するものではありません。しかし、3Rだけでは対応しきれない次のような課題が明らかになってきました。

・リサイクルされた素材の品質低下(ダウンサイクル)の問題

・リサイクルにかかるエネルギーコストの問題

・廃棄物の発生そのものを減らす取り組みの不足

 

こうした課題を踏まえ、第五次計画では、「そもそも廃棄物を生まない社会システムをつくる」という、より根本的なアプローチである循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行が明確に打ち出されました。

3Rが「発生した廃棄物にどう対応するか」という視点だったのに対し、循環経済は「最初から廃棄物が発生しない設計・仕組みをつくる」という視点への転換だと言えます。

 


今後の展望|循環経済社会に向けて何が変わっていくのか

 

第五次循環型社会形成推進基本計画の実現に向けて、今後は次のような変化が段階的に進んでいくと考えられます。

制度・ルールの整備

再資源化を促進するための法整備、認定制度、支援措置などが順次整備されていきます。企業が新しい循環型ビジネスモデルに取り組みやすい環境が整えられていく方向性です。

 

業種を超えた連携の拡大

製造業、流通業、リサイクル業、自治体など、これまで別々に動いていた主体同士の連携が強化されていきます。一つの製品が生まれてから資源に戻るまでの流れ全体を、複数のプレイヤーが協力して設計する動きが加速します。

 

デジタル技術の活用

資源や廃棄物の流れを「見える化」するデジタル技術の活用も進んでいきます。どこで、どれだけの資源が、どのように循環しているかをデータで把握できるようになることで、より効率的な資源循環が可能になります。

 

国際的な連携の強化

国内だけでなく、国際的な資源循環のルールづくりや、日本の循環型技術・ビジネスモデルの海外展開も進んでいきます。

 


まとめ|循環型社会は「みんなでつくる」もの

サーキュラーエコノミーとは?

第五次循環型社会形成推進基本計画は、日本の資源循環・廃棄物政策における大きな転換点です。

これまでの「ごみを減らす」「リサイクルする」という取り組みに加えて、循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行を国家戦略として明確に位置づけたことが最大のポイントです。

この計画が目指す社会は、環境のためだけの社会ではありません。経済成長、地域の活性化、暮らしの質の向上を同時に実現する社会として描かれています。

企業にとっては経営戦略の見直し、自治体にとっては地域政策の再設計、そして個人にとっては日々の暮らし方の小さな工夫—それぞれの立場でできることから始めることが、この計画の実現につながっていきます。

循環型社会は、国や大企業だけがつくるものではありません。一人ひとりの選択と行動の積み重ねが、社会全体の大きな循環をつくっていくのです。

まずは、この計画の考え方を知ることから、循環型社会への一歩を踏み出してみましょう。

 


参考・出典

・環境省「循環型社会形成推進基本計画」

・環境省「第五次循環型社会形成推進基本計画」(2024年8月閣議決定)

・循環型社会形成推進基本法

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