2026.06.30

リチウムイオン電池の捨て方、実はみんな間違えてる。火災件数が1年で2倍になった理由

リチウムイオン電池の捨て方、実はみんな間違えてる。火災件数が1年で2倍になった理由

スマートフォン、モバイルバッテリー、ワイヤレスイヤホン、電動歯ブラシ、コードレス掃除機、加熱式たばこ——これらに共通するものが何かわかりますか? そう、すべてに「リチウムイオン電池」が使われています。 今や私たちの生活に欠かせない存在になったリチウムイオン電池ですが、その捨て方を間違えると、実は非常に危険なことが起きます。ごみ収集車が燃える。清掃工場が火災で長期停止する。収集作業員が負傷する——そんな事故が、今この瞬間も日本全国で急増しています。 「え、そんなに大事なの?」と思った方、ぜひ最後まで読んでみてください。あなたの「ちょっとした捨て方の間違い」が、街のごみ処理を止めてしまうかもしれません。

火災件数が1年で2倍に——数字で見るリチウムイオン電池問題の深刻さ

まず、現状を数字で確認しましょう。 政府広報オンラインによると、リチウムイオン電池が混ざった一般ごみから出火し消防隊等によって消火されたケースは、2022年度(令和4年度)が4,260件だったのに対し、2023年度(令和5年度)は8,543件と、わずか1年で約2倍に急増しています。 さらに別の調査では、2022年度だけで13,111件(うち発煙・発火は6,423件)の火災・発煙事故が発生したというデータもあります。ごみ処理施設が受けた被害額は年間100億円規模との推計もあり、日本経済新聞も「ごみ処理場の被害額、年100億円」と報じています。 2025年7月にはJR山手線の車内でモバイルバッテリーが発火してダイヤが乱れる事故が発生。同年8月には東海道新幹線「のぞみ」でも座席ポケットのモバイルバッテリーから発火するという事故が起きました。ごみ処理現場だけの問題ではなく、私たちの身近な場所でも起きているのです。 なぜこれほどまでに火災が増えているのでしょうか。

なぜリチウムイオン電池は「燃える」のか

なぜリチウムイオン電池は「燃える」のか

リチウムイオン電池が火災の原因になるメカニズムを理解しておきましょう。 リチウムイオン電池は、正極・負極・電解液・セパレーター(絶縁膜)で構成されています。電解液として可燃性の有機溶剤が使われているため、何らかの衝撃や圧力でセパレーターが損傷すると内部短絡が起き、急激な発熱→電解液の揮発→発煙・発火という「熱暴走」が連鎖します。 ごみ収集車の中では、積み込まれたごみが強力な回転板で圧縮されます。その際にリチウムイオン電池を含む製品が押しつぶされると、内部の正極板と負極板が接触して短絡し、発火するリスクが一気に高まります。清掃工場の破砕機でも同様のことが起きます。 小さなワイヤレスイヤホンに入っている電池でも、条件が重なれば大規模な火災につながることがあります。「小さいから大丈夫」という感覚は禁物です。

 

「膨らんだ電池」は特に危険

特に注意が必要なのが、膨張・変形したリチウムイオン電池です。電池が膨らんでいるのは内部でガスが発生している状態であり、通常よりもはるかに発火リスクが高い状態です。 「古いスマホを捨てようとしたら電池が膨らんでいた」というケースは珍しくありません。こうした膨張した電池を含む製品を何も考えずに不燃ごみに出してしまうと、収集・処理の過程で火災につながる可能性があります。膨張・変形した電池は、自治体の指定する回収拠点に持ち込むか、まず自治体や販売店に相談することが基本です。

「不燃ごみに出せばいい」は間違い——リチウムイオン電池の正しい捨て方

「充電式の電池だから不燃ごみでしょ」——この感覚が最も多い誤解の一つです。リチウムイオン電池は、不燃ごみでも可燃ごみでも出してはいけません。 では、どう捨てればいいのか。基本的な流れは次のとおりです。

 

① 電池が取り外せる製品——電池を外して回収拠点へ

コードレス掃除機・電動工具・デジタルカメラなど、リチウムイオン電池が取り外せる製品は、電池を本体から外してください。外した電池はショート(短絡)防止のためにテープで端子を絶縁した上で、次の回収拠点に持ち込みます。

  • 家電量販店・ホームセンターなどのJBRC回収ボックス:リチウムイオン電池・ニカド電池・ニッケル水素電池を回収しています。全国に約15万か所以上の回収拠点があります。
  • 携帯電話会社のショップ(モバイル・リサイクル・ネットワーク):携帯電話本体・充電器・二次電池を回収しています。
  • 自治体の小型家電リサイクルボックス:自治体によって対応が異なるため、事前に確認を。

 

② 電池が取り外せない製品——小型家電回収ボックスへ

ワイヤレスイヤホン・スマートウォッチ・モバイルバッテリー・加熱式たばこなど、電池が一体型になっていて取り外せない製品が増えています。こうした製品は無理に分解しようとすると、それ自体が発火リスクになります。 取り外せない場合は、製品ごと自治体の小型家電回収ボックスに入れるか、販売店の回収サービスを利用するのが基本です。加熱式たばこ(glo・Ploom)については、店頭回収を行っているメーカーもあります。 「どこに持っていけばいいかわからない」という場合は、まず自治体のホームページか窓口に問い合わせるのが確実です。

 

③ 膨張・破損した電池——自治体か販売店に相談を

膨張・変形したリチウムイオン電池は、通常の回収ボックスに入れることができない場合があります。自治体や製品の販売店に相談し、適切な処理方法を確認してください。絶対に自己判断で不燃ごみや可燃ごみに出さないことが重要です。

「電池が入っているとは思わなかった」——気づきにくい製品一覧

リチウムイオン電池の誤廃棄が増えている背景の一つが、「これに電池が入っているとは思わなかった」という認知不足です。実はリチウムイオン電池が入っている製品は非常に多く、気づかずに普通のごみに出してしまうケースが後を絶ちません。 次のような製品にはリチウムイオン電池が含まれている可能性があります。

  • スマートフォン・タブレット・ノートパソコン
  • モバイルバッテリー・ポータブル電源
  • ワイヤレスイヤホン・Bluetoothスピーカー
  • スマートウォッチ・活動量計
  • 加熱式たばこ(IQOS・glo・Ploom)
  • コードレス掃除機・電動歯ブラシ・電気シェーバー
  • 電動工具・コードレスドリル
  • 携帯用扇風機・ハンディファン
  • 電動自転車・電動キックボードのバッテリー
  • ゲーム機・携帯型ゲーム機のコントローラー
  • おもちゃ・ラジコン
  • ドローン

「まさかこれにも?」と思うものが含まれているかもしれません。不用品を処分する前に、「これに充電式電池が入っていないか」を確認する習慣をつけることが大切です。

2026年から変わること——モバイルバッテリー等の回収義務化

 

リチウムイオン電池をめぐる制度も大きく変わりつつあります。 2026年4月からは、モバイルバッテリー・携帯電話・加熱式たばこが「指定再資源化製品」に指定され、メーカー等に回収・リサイクルの義務が課される見通しです。これにより、販売店での回収体制がより整備され、消費者が回収拠点を見つけやすくなることが期待されています。 また政府は2025年12月に「リチウムイオン電池総合対策パッケージ」を策定しました。廃棄時における膨張・変形したリチウムイオン電池の安全な処理方法の策定、廃棄物処理施設への火災防止設備の導入支援などが盛り込まれています。国民・事業者向けには「賢く選ぶ(Cool choice)」「丁寧に使う(Careful use)」「正しく捨てる そして資源循環(Correct disposal with better recycling)」という「3つのC」が呼びかけられています。 横浜市では2025年12月から、従来の「乾電池」の回収に加えてモバイルバッテリーなどのリチウムイオン電池も「電池類」として分別収集を開始しています。各自治体でも対応が進んでおり、お住まいの地域のルールを改めて確認しておくことをおすすめします。

事業者として知っておきたいこと——職場のリチウムイオン電池管理

リチウムイオン電池の誤廃棄は家庭だけの問題ではありません。オフィス・工場・店舗など、あらゆる事業所でも発生しています。

 

① 社内の廃棄ルールを整備する

スマートフォン・ノートパソコン・タブレット・モバイルバッテリーなど、職場で使用するデバイスには必ずリチウムイオン電池が含まれています。機器の廃棄・更新時に、電池を含む製品をどのルートで処理するかを社内ルールとして明文化しておきましょう。 特にIT資産の大量廃棄(PCの一斉更新など)の際には、電池を含む製品が大量に発生します。事前に回収業者・リサイクル業者と契約しておくことが重要です。

 

② 従業員への周知を徹底する

「モバイルバッテリーを不燃ごみに捨てた」「古いスマホを可燃ごみに出した」——こうした誤廃棄は、ルールを知らないことから起きます。社内報・朝礼・掲示物などを通じて、リチウムイオン電池の正しい捨て方を定期的に周知することが必要です。 環境省はリチウムイオン電池の火災防止に関する啓発ツール(環境省)を公開しており、ポスターや動画を無料で活用できます。社内掲示に役立ててみてください。

 

③ 産業廃棄物として出る電池の管理にも注意

製造業・電子機器関連業など、事業活動の中でリチウムイオン電池を大量に使用・廃棄する事業者は、産業廃棄物としての適正処理も求められます。廃棄物処理法に基づき、適切な許可を持つ処理業者に委託し、マニフェストを管理することが義務です。 不適切な処理によって処理施設で火災が発生した場合、委託した排出事業者も責任を問われる可能性があります。委託先の処理方法・設備・火災対策についても、事前に確認しておきましょう。

「正しく捨てる」が資源にもなる——リチウムイオン電池のリサイクル価値

リチウムイオン電池には、リチウム・ニッケル・コバルト・マンガンなどの重要鉱物資源が含まれています。これらは電気自動車・再生可能エネルギー設備などに不可欠な素材であり、日本はそのほとんどを海外からの輸入に依存しています。 使用済みのリチウムイオン電池を適切に回収・リサイクルすることで、これらの貴重な資源を国内で回収・再利用できます。「正しく捨てる」ことは、火災防止だけでなく、資源の有効活用・脱炭素社会の実現にもつながる行動です。環境問題の成功事例が示すように、一人ひとりの正しい行動の積み重ねが大きな変化を生みます。

まとめ——「捨て方を知っている」が街を守る

リチウムイオン電池による火災事故は、決して「現場の問題」ではありません。一人ひとりの「ちょっとした捨て方の間違い」が積み重なって、収集作業員の安全を脅かし、清掃工場を停止させ、税金による莫大な復旧費用を生み出しています。 2023年度の火災件数は前年比約2倍の8,543件。ごみ処理施設の被害額は年間100億円規模——これが今の現実です。 でも、対策はシンプルです。

  • リチウムイオン電池が入った製品を不燃ごみ・可燃ごみに出さない
  • 電池が取り外せるものは外して回収ボックスへ
  • 取り外せないものは小型家電回収ボックスや販売店回収へ
  • 膨張・変形した電池は自治体か販売店に相談
  • 不用品を捨てる前に「電池が入っていないか」を確認する習慣をつける

2026年4月からは回収・リサイクルの義務化も進み、制度面での整備も加速します。制度が整うのを待つのではなく、今日から正しい行動を始めることが、街の安全と資源循環を守ることにつながります。資源リサイクルの取り組み事例もあわせて参考にしてみてください。

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