2025.12.09

コンプライアンスの盲点!廃掃法違反で企業が負う両罰規定の重責と排出事業者責任

コンプライアンスの盲点!廃掃法違反で企業が負う両罰規定の重責と排出事業者責任

事業活動を行う上で、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(通称:廃掃法)の順守は、単なる法的な義務ではなく、企業の存続と社会的信用に直結するコンプライアンスの根幹です。

特に、産業廃棄物の処理においては、不法投棄や不適正処理が発覚した場合、環境汚染という深刻な問題を引き起こすだけでなく、企業自身が極めて重い処罰に直面します。

その中でも、経営層や管理部門が最も警戒すべき規定が「両罰規定」です。この規定は、従業員や代理人が廃掃法に違反した場合、実際に違反行為を行った個人だけでなく、その企業(法人)そのものに対しても、罰金刑を科すという非常に厳しいものです。

本コラムでは、両罰規定の具体的な内容と適用リスク、そして排出事業者として負うべき最終責任を深く掘り下げ、産業廃棄物の適正処理を確実にするための管理体制の構築について解説します。

 

1. 廃掃法における「両罰規定」とは何か?

両罰規定は、法人運営においてコンプライアンス体制の不備を問うものです。廃掃法第32条に定められており、その内容は非常にシンプルかつ強力です。

「法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、一定の罰則に該当する違反行為をしたときは、行為者を処罰するほか、その法人又は人に対しても、当該各条の罰金刑を科する。」

 

(1) 企業に科される罰則の重さ

両罰規定の適用により、企業に科される罰金は、個人(行為者)に科される罰金とは別に加算されます。例えば、不法投棄に関する罰則は、個人に対しては「5年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金」、そして企業に対しては、「3億円以下の罰金」という極めて高額な罰金刑が定められています。

これは、一担当者のミスや不正が、企業の財政基盤を揺るがす重大なリスクとなることを意味します。この高額な罰金は、廃掃法が不法投棄や不適正処理を特に重い社会犯罪と見なしていることの表れです。

 

(2) 処罰の対象となる主な違反行為

両罰規定の対象となるのは、廃掃法の中でも特に悪質性が高いとされる以下の違反行為です。

  • 不法投棄(産業廃棄物・一般廃棄物)
  • 許可なしの産業廃棄物処理業の営業(無許可営業)
  • 委託基準違反(無許可業者への委託)
  • マニフェスト(産業廃棄物管理票)の虚偽記載、未交付、不交付

 

2. 排出事業者が逃れられない「最終責任」の構造

廃掃法において、排出事業者(産業廃棄物を排出した企業)は、廃棄物が最終処分されるまで、その適正処理に対する最終責任を負うと定められています。これは、廃棄物処理を外部の業者に委託したとしても、その委託先が不適正処理を行った場合、排出事業者も責任を免れないということを意味します。

 

(1) 「委託基準」違反の落とし穴

排出事業者が陥りやすいのが「委託基準」違反です。廃掃法では、産業廃棄物の処理を委託する場合、以下の事項を厳格に守るよう義務付けています。

  • 無許可業者への委託禁止: 収集運搬業者と処分業者が、それぞれ必要な都道府県知事等の許可を持っているか確認すること。
  • 書面による契約義務: 契約書に法定の必須事項(産業廃棄物の種類、数量、処理の方法、最終処分の場所など)が記載されていること。
  • マニフェスト の交付義務: 廃棄物を業者に引き渡す際に、マニフェストを交付し、処理の流れを管理すること。

これらの基準に違反した場合、排出事業者も処罰の対象となり、両罰規定が適用されるリスクが生じます。

 

(2) 措置命令のリスク:処理費用を全額負担

委託した業者が不法投棄を行った場合、行政は排出事業者に対し、「措置命令」を発令します。この命令は、「不適正処理された廃棄物を自ら撤去・処分せよ」という行政処分であり、排出事業者は廃棄物の撤去、土壌の浄化、最終処分に至るまでの費用(数億円規模になることも珍しくない)を全て負担しなければなりません。

これは罰則(罰金や懲役)とは別に行われるものであり、排出事業者にとって最も大きな経済的リスクとなります。このリスクを回避するためには、委託先の選定と定期的な管理が極めて重要になります。

 

3. 適正処理を確実にするためのマニフェスト管理の重要性

マニフェスト(産業廃棄物管理票)制度は、排出事業者の最終責任を果たすための根幹的な仕組みです。マニフェストは、廃棄物の発生から収集、運搬、中間処理、そして最終処分に至るまでの処理経路をすべて追跡・証明する重要な書類です。

 

(1) マニフェストの交付と回収期限

排出事業者は、産業廃棄物を引き渡す際に、マニフェストを交付し、各処理工程が完了するごとに、その証明となる控えを業者から返送してもらう必要があります。

  • 中間処理業者からの返送(D票):引渡し後90日以内
  • 最終処分業者からの返送(E票):引渡し後180日以内

これらの期限内に控えが返送されない場合、排出事業者は処理業者に処理状況を確認し、それでも状況が確認できない場合は、行政に報告する義務があります。この報告義務を怠ると、処罰の対象となります。

 

(2) 電子マニフェストへの移行のメリット

紙マニフェストは、紛失や記載ミスなどのリスクが常に存在し、管理に大きな手間がかかります。これに対し、電子マニフェストは、情報が電子管理され、廃掃法が定める処理期限や報告義務などをシステムが自動でチェックします。この電子化は、排出事業者のコンプライアンス順守体制を大幅に強化する鍵となります。

 

4. コンプライアンス体制を強化するための具体的対策

両罰規定や措置命令のリスクから企業を守るためには、廃棄物処理に関する徹底したコンプライアンス体制の構築が必須です。

  • 廃棄物処理委託先の厳格な選定と監査: 許可証の有効期限、処理施設の能力、過去の処分実績、環境への取り組みなどを定期的に確認し、委託先の信頼性を常に監査する体制を構築します。
  • 社内教育の徹底: 産業廃棄物の排出部署(製造現場、建設現場など)に対し、分別、マニフェストの基礎知識、不法投棄の罰則などについて、定期的な廃掃法研修を実施します。
  • 廃棄物管理のデジタル化: 電子マニフェスト管理、委託契約書の電子化、処理状況のリアルタイム監視など、デジタルツールを活用して管理業務の精度と透明性を高めます。

廃掃法は頻繁に改正が行われ、罰則も厳しくなる傾向にあります。企業は、常に最新の法規制に対応し、コンプライアンス体制をアップデートし続ける必要があります。この継続的な管理こそが、排出事業者としての最終責任を果たす唯一の方法です。

 

5. 廃棄物管理のデジタル化がコンプライアンス順守を保証する

廃掃法が定める厳しい排出事業者責任と、両罰規定による高額な罰則リスクから企業を守るためには、ヒューマンエラーを防ぎ、法令要求事項を自動でクリアできる仕組みの導入が最も効果的です。特にマニフェストの管理や委託業者の情報管理は、手作業では限界があります。

こうした課題を解決し、廃棄物処理のコンプライアンスを徹底的に順守するため、産業廃棄物の電子管理システムが広く導入されています。

排出事業者の最終責任を果たすための確実なサポートとして、産業廃棄物管理に特化したデジタルシステムは、マニフェストの交付から最終処分の確認、委託業者の許可情報管理までを一元化し、法令に定められた期限や必須事項のチェックを自動で行います。

この廃棄物管理システムを導入することで、廃掃法が求める高度なコンプライアンス体制を容易に構築し、両罰規定や措置命令のリスクから大切な企業資産と信用を守ることに繋がります。

 


ナガイホールディングス株式会社が提供する廃棄物管理システム「エコスタイルWeb」は、排出事業者様の産業廃棄物管理のコンプライアンスと効率化を強力にサポートします。システムの詳細については、以下のページをご覧ください。

https://nagaiholdings.jp/business/ecostyleweb/

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