2025.11.25

いまさら聞けない!プラスチックの賢い分別とリサイクル後の意外な行方:脱炭素社会への貢献

ごみの写真

私たちの日常生活に不可欠なプラスチック。軽くて丈夫、加工しやすいため、容器、包装、家電、衣料品とあらゆる分野で使用されています。しかし、その利便性の裏側で、大量の廃棄物となり、海洋汚染や地球温暖化(CO2排出)の主要因の一つとなっています。

2050年カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミー(循環経済)の実現を目指す上で、このプラスチック問題を解決することは、社会全体の喫緊の課題です。その解決の第一歩は、私たち一人ひとりの「分別」と、「リサイクル」の仕組みを正しく理解することにあります。

 

1. 混乱しやすいプラスチックの分別ルールを理解する

家庭から出るプラスチック廃棄物は、大きく分けて「容器包装プラスチック」と「製品プラスチック」の2種類に分類され、分別ルールが異なります。

 

(1) 「プラマーク」がついた容器包装プラスチック

商品を入れたり、包んだりしているプラスチック(ペットボトルのキャップやラベル、レジ袋、食品トレイ、シャンプーのボトルなど)は、「プラスチック製容器包装」として、市町村が指定する方法で回収されます。この目印が「プラマーク」です。

分別の際の重要なポイントは「汚れを落とすこと」です。中身を使い切り、軽く水洗いするなどして汚れを取り除く必要があります。油分や食品残渣が付着したままのプラスチックは、異物としてリサイクル工程で品質を低下させたり、悪臭やカビの原因となるため、「燃やすごみ」として処理されることがあります。賢いリサイクルの第一歩は、この「ひと手間」を惜しまないことです。

 

(2) 製品プラスチック(「燃やすごみ」や「粗大ごみ」)

おもちゃ、ハンガー、バケツ、CDケース、歯ブラシなど、商品そのものに使われているプラスチックは、原則として「容器包装プラスチック」とは区別されます。これらは市町村によって「燃やすごみ」「燃えないごみ」または「粗大ごみ」として処理されることが一般的です。

ただし、近年施行されたプラスチック資源循環促進法により、一部の自治体ではこれら製品プラスチックも一括回収し、リサイクルに回す取り組み(一括回収制度)が始まっています。お住まいの自治体のルールを必ず確認することが大切です。

 

2. プラスチックのリサイクル:マテリアルリサイクルの限界と新たな挑戦

回収されたプラスチックが辿る道は、主に「マテリアルリサイクル」と「ケミカルリサイクル」の二つに分けられます。

 

(1) マテリアルリサイクル(物理的再生)の現状

マテリアルリサイクルは、回収したプラスチックを溶かし、固め、新しい製品の原料(ペレットなど)として再利用する手法です。多くの場合、これが「リサイクル」としてイメージされる方法です。

しかし、この手法には大きな限界があります。

 

  • 品質の劣化(ダウンサイクル): プラスチックは加熱するたびに品質が低下するため、何度もリサイクルを繰り返すことができません。最終的には、以前よりも低品質な製品(例:衣料品からベンチ)にしかならず、最終的には廃棄物として焼却・埋め立てられます。
  • 異物の混入: 複数の種類のプラスチック(PET、PE、PPなど)が混ざったり、紙や金属などの異物が混入したりすると、再利用時の品質が保てず、リサイクルできなくなります。これが、分別時に「汚れを落とす」ことが重要である理由です。

 

(2) ケミカルリサイクル(化学的再生)の可能性

サーキュラーエコノミーの実現において、将来的に主役となるのがケミカルリサイクルです。これは、プラスチックを化学的に分解し、分子レベルで石油やガスなどの原料に戻してから再合成する手法です。

この手法の最大の利点は、廃棄物となったプラスチックを新品と同等の品質のプラスチック(バージン材)に戻せる点です。また、多少汚れていたり、複数の種類が混ざっていたりしても処理が比較的容易なため、マテリアルリサイクルが困難な廃棄物を資源化できます。

ケミカルリサイクルには、熱分解、ガス化、油化など複数の技術がありますが、これらの技術開発と大規模実証が、現在の脱炭素社会への移行を担う大きな産業フロンティアとなっています。

 

3. 脱炭素化への貢献:プラスチック処理とGX投資

プラスチック廃棄物の処理は、気候変動対策(脱炭素化)と密接に関わっています。現在、日本でリサイクルされなかったプラスチックの多くは焼却処分されていますが、この際に大量のCO2が排出されます。

サーキュラーエコノミー、すなわちリサイクル率の向上は、焼却量を減らすことでCO2排出量を削減する、直接的な脱炭素化戦略です。政府が推進するGX(グリーントランスフォーメーション)投資戦略においても、プラスチックの高度リサイクル技術や、廃棄物をCO2排出の少ない燃料に転換する技術開発が重要視されています。

企業側も、製品設計時にLCA(ライフサイクルアセスメント)の考え方を取り入れ、製品のライフサイクル全体で排出されるCO2量を評価し、プラスチックの使用量削減や再生材利用を推進しています。

 

4. 産業廃棄物としてのプラスチックの高度循環

家庭ごみだけでなく、企業活動から出る産業廃棄物に含まれるプラスチックもまた、サーキュラーエコノミーの重要なターゲットです。

環境事業者は、企業から排出される廃プラスチック類を大量かつ安定的に受け入れ、高度な選別・処理技術を用いて、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルの原料として転換しています。例えば、製造業の端材や建設現場で使われたプラスチックを、選別・破砕・ペレット化することで、資源としての価値を最大化しています。

この産業廃棄物分野での徹底したリサイクルは、企業の脱炭素化目標達成をサポートすると同時に、社会全体のプラスチック廃棄物問題の解決に不可欠な役割を果たしています。

私たち一人ひとりの分別意識の向上と、ケミカルリサイクルのような革新的な技術が結びつくことで、プラスチックは「厄介なごみ」から「何度でも使える貴重な資源」へと、その存在意義を大きく変えることになるでしょう。この大きな循環の輪に、消費者として、また企業の一員として参加することが、未来の地球環境への最大の貢献となります。

 


🔗 【事業紹介】プラスチックのリサイクルを推進する環境事業の取り組み

本コラムで解説したプラスチックの分別、回収、そして高度なリサイクル技術は、地域の環境事業によって支えられています。

愛知・名古屋地域で総合的な廃棄物処理とリサイクルサービスを展開する企業では、企業から排出される廃プラスチック類のリサイクルを積極的に推進し、サーキュラーエコノミーの構築に貢献しています。

プラスチックのリサイクルと産業廃棄物処理に関する詳細は、以下のページでご確認いただけます。

https://nagaiholdings.jp/business/plastic/

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