2024.07.19

食品ロス削減の取り組みと私たちにできること|現状・原因・SDGsとの関わりを徹底解説

食品ロスに関して対策や数値などを解説

私たちが毎日口にする「食事」。その一方で、まだ食べられるのに捨てられてしまう「食品ロス(フードロス)」が、今や世界的な社会問題となっています。

「もったいない」という言葉の発祥の地である日本ですが、実は世界的に見ても食品ロスの多い国の一つであることをご存知でしょうか。食品ロスは単なる「食べ物の無駄」にとどまらず、環境破壊や経済的損失、さらには将来的な食糧危機とも密接に関係しています。

 


1. 食品ロス(フードロス)とは何か? 正しい定義と種類

食品ロスの定義:本来食べられるはずの「命」を捨てること

食品ロスとは、「本来食べられる状態であるにもかかわらず、捨てられてしまう食品」のことを指します。これには、家庭での食べ残しや、お店での期限切れ、製造過程で出る規格外品などが含まれます。

よく混同される言葉に「廃棄物(ゴミ)」がありますが、食品ロスはあくまで「食べられたはずのもの」に限定される点が特徴です。

 

食品ロスを構成する3つの要素

食品ロスは、発生する場所や状況によって大きく以下の3つに分類されます。

1.直接廃棄:賞味期限や消費期限が切れたことで、手付かずのまま捨てられるもの。

2.食べ残し:食卓に出されたものの、食べきれずに残して捨てられるもの。

3.過剰除去:野菜の皮を厚く剥きすぎたり、食べられる部分まで切り落としてしまったりするもの。

 

「食品ロス」と「フードロス」の違い

厳密には、国際連合食糧農業機関(FAO)の定義では、生産・流通段階での損失を「フードロス」、小売・消費段階での廃棄を「フードウェイスト」と呼び分けますが、日本ではこれらを総称して「食品ロス」と呼ぶのが一般的です。

 


2. 日本と世界の食品ロスの現状:衝撃的な数字

日本の食品ロス総量は「523万トン」

農林水産省と環境省の令和3年度(2021年度)の推計によれば、日本の食品ロス総量は年間で約523万トンにのぼります。

この数字を身近な例に例えると、以下のような驚くべき規模になります。

 ・国民1人あたり:毎日お茶碗約1杯分(約114g)の食べ物を捨てている計算。

 ・世界全体での食糧援助量との比較:世界中で飢餓に苦しむ人々への食糧援助量(年間約480万トン)を、日本1国だけで上回る量の食べ物を捨てていることになります。

 

「事業系」と「家庭系」の意外な比率

食品ロスと聞くと、飲食店やコンビニなどの「事業系」が多いイメージを持つかもしれません。しかし、内訳を見ると驚きの事実が判明します。

 

区分 発生量 割合
事業系食品ロス 約279万トン 約53%
家庭系食品ロス 約244万トン 約47%

 

このように、ロスの約半分は私たちの「家庭」から発生しているのです。つまり、一般家庭の意識が変わるだけで、日本の食品ロスは劇的に削減できる可能性があります。

 


3. なぜ食品ロスは起こるのか? 社会に潜む構造的課題

食品ロスが発生する背景には、消費者側の意識だけでなく、日本のビジネス慣習や心理的な要因が複雑に絡み合っています。

 

① ビジネス慣習「3分の1ルール」の存在

日本の食品業界には、製造日から賞味期限までを3分割し、それぞれの期間内に「納品」と「販売」を終えなければならないという商習慣があります。

 ・前半1/3:小売店への納品期限

 ・中間1/3:店頭での販売期限この期限を1日でも過ぎると、中身に全く問題がなくてもメーカーへ返品されたり、廃棄されたりしてしまうのです。現在、このルールの見直しが進んでいますが、まだ根強く残っている課題です。

 

② 消費者の「見た目重視」と「過度な鮮度志向」

スーパーの棚で、少しでも期限が長いものを奥から引き抜く「奥取り」や、形が少し不揃いなだけで「規格外」として敬遠する傾向も、ロスを助長しています。

「常に棚に商品が並んでいること(欠品を許さない)」という消費者の期待が、店舗側の過剰な発注を招く原因にもなっています。

 

③ 大量調理と「おもてなし」の文化

飲食店では、顧客の満足度を高めるためにボリュームを重視したり、宴会などで食べきれないほどの料理を提供したりすることがあります。これらが「食べ残し」に直結しています。

 


4. 食品ロスが引き起こす深刻な影響

食べ物を捨てることは、単にもったいないだけでなく、地球環境や経済に甚大なダメージを与えます。

 

① 環境への負荷:二酸化炭素の排出

捨てられた食品は、ゴミとして焼却処分されます。食品は水分を多く含むため、燃やす際に膨大なエネルギーを消費し、大量のCO2(二酸化炭素)を排出します。これが地球温暖化を加速させる大きな要因となっています。

 

② 水資源とエネルギーの無駄使い

食べ物を作るためには、膨大な水、肥料、農機具を動かす燃料、そして人の労働力が必要です。食品を捨てるということは、それらを作るために費やされたすべての資源をドブに捨てることと同義なのです。

 

③ 経済的損失

日本全体で食品ロスを処理するためにかかるコストは、年間数千億円にものぼると言われています。この費用は私たちの税金で賄われており、経済的な負担も無視できません。

 


5. 私たちにできること:今日から始める「食品ロス削減」ライフハック

家庭系食品ロスが全体の半分近くを占める以上、私たちの行動変容こそが最大の解決策です。明日から実践できる4つのステップを紹介します。

 

ステップ1:買い物の工夫(買いすぎない)

・冷蔵庫の「棚卸し」を習慣化:買い物に行く前に、スマホで冷蔵庫の中を撮影しましょう。重複買いを防ぐ最強の手段です。

・「てまえどり」の実践:すぐに食べるものは、棚の手前にある期限の近いものから取りましょう。

・空腹で買い物に行かない:お腹が空いていると、ついつい不要なものまでカゴに入れてしまいます。

 

ステップ2:保存の工夫(長持ちさせる)

・正しい保存場所を知る:野菜や果物ごとに最適な保存方法(常温、冷蔵、冷凍)を確認しましょう。

・冷凍保存のフル活用:肉や魚はもちろん、使いきれない野菜もカットして冷凍しておけば、調理時間の短縮にもなります。

・「ローリングストック」の導入:備蓄品を日常生活で使いながら買い足すことで、いざという時の期限切れを防ぎます。

 

ステップ3:調理の工夫(使い切る・作りすぎない)

・「エコな調理法」を取り入れる:野菜の皮や茎も、きんぴらや出汁(ベジブロス)にすれば美味しく食べられます。

・リメイク料理のレパートリーを増やす:残ったカレーをコロッケにする、煮物をチャーハンにするなど、飽きずに食べきる工夫を。

 

ステップ4:外食の工夫(注文しすぎない)

・「小盛り」の活用:食べきれるか不安な時は、最初からご飯の量を少なくしてもらいましょう。

・「3010(さんまるいちまる)運動」の実施:宴会の開始30分と終了10分は、席を立たずに料理を楽しみ、食べ残しを減らす運動です。

 


6. 専門知識:賞味期限と消費期限の違いを正しく理解する

食品ロスを減らす上で最も重要なのが、期限表示の正しい理解です。ここを勘違いしているだけで、多くの「食べられる食品」が捨てられています。

 

賞味期限(Best Before)

 ・意味:「美味しく食べられる期限」です。

 ・対象:スナック菓子、カップ麺、缶詰など、比較的劣化が遅いもの。

 ・ポイント:この期限を過ぎても、すぐに食べられなくなるわけではありません。見た目や臭いを確認し、自分で判断することが大切です。

 

消費期限(Use By)

 ・意味:「安全に食べられる期限」です。

 ・対象:お弁当、サンドイッチ、生菓子、精肉など、傷みやすいもの。

 ・ポイント:この期限を過ぎたら、健康を害する恐れがあるため、食べるのは控えましょう。

 ・豆知識:賞味期限は「1.1倍〜1.5倍」程度の余裕を持って設定されていることが多いですが、一度開封したら期限に関わらず早めに食べることが鉄則です。

 


7. 社会全体の取り組み:加速する食品ロス削減の動き

近年、テクノロジーや新しいビジネスモデルを活用したロス削減の動きが活発化しています。

 

① フードバンクとフードドライブ

品質に問題はないものの、余ってしまった食品を生活困窮者や福祉施設に寄付する活動です。家庭で余っている乾麺や缶詰を持ち寄る「フードドライブ」も地域で広がっています。

 

② AIによる需要予測

コンビニやスーパーでは、AIを活用して「何が・いつ・どれだけ売れるか」を高度に予測し、発注量を最適化することで、店舗での廃棄を劇的に減らす取り組みが進んでいます。

 

③ 食品シェアリングアプリの普及

「TABETE」や「Kuradashi」といったサービスは、閉店間際で余ってしまった料理や、規格外の訳あり商品を安価に消費者に繋げるプラットフォームとして人気を集めています。

 


8. まとめ:あなたの「一口」が地球の未来を変える

食品ロス削減は、SDGs(持続可能な開発目標)の目標12「つくる責任 つかう責任」のターゲットの一つにも掲げられており、世界共通の宿題です。

日本で発生する年間523万トンの食品ロス。そのうち、私たちの家庭から出る244万トンを減らすことは、決して不可能なことではありません。

「冷蔵庫をチェックしてから買い物に行く」「期限の近いものから食べる」「皮まで美味しく料理する」。こうした一人ひとりの小さな「意識の変革」の積み重ねが、何百万トンという巨大なロスを削減する大きな力となります。

今日から、食卓を囲むときに少しだけ「この食べ物の背景」に思いを馳せてみませんか。あなたの「食べきる」という選択が、地球の未来を確実に明るい方向へと変えていくのです。

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