プラスチック問題とその影響について vol.3 〜気温上昇を1.5℃に抑えるために私たちができること〜
私たちが日常的に消費し、そして捨てているプラスチック。vol.2では「資源枯渇」という観点からそのリスクを解説しましたが、今回のvol.3では、今や人類共通の最優先課題となった「地球温暖化」とプラスチックの密接な関係、そして国際的な目標である「1.5℃目標」の重要性について深掘りしていきます。
なぜプラスチックを減らすことが、猛暑や巨大台風を防ぐことにつながるのか。そのメカニズムを正しく理解し、未来のために私たちが取るべき行動を考えていきましょう。
1. 温室効果ガスのメカニズムと地球の「衣服」の役割
地球を包む大気と「温室効果」の重要性
地球が生命豊かな惑星である理由は、大気による絶妙な気温調整にあります。地球は主に太陽から届く熱(日射)によって温められ、夜間にはその熱が宇宙空間へと放出されます。この熱の出入りをコントロールし、気温を一定の範囲に保っているのが大気中に含まれる「温室効果ガス」です。
主な温室効果ガスには、以下のものがあります。
・二酸化炭素(CO2):化石燃料の燃焼などで発生。
・メタン:家畜の排泄物や天然ガスの採掘などで発生。
・一酸化二窒素:肥料の使用や工業プロセスで発生。
・フロン類:冷媒や洗浄剤として使用。
これらのガスが適度にあるおかげで、地球の平均気温は約14℃に保たれています。もし温室効果ガスが全くなければ、地球の気温はマイナス19℃まで下がってしまうと推測されており、まさに大気は地球にとっての「衣服」や「ブランケット」のような役割を果たしているのです。
「厚着」しすぎた地球が悲鳴を上げている
しかし、問題はその「衣服」が厚くなりすぎていることにあります。産業革命以降、人類は石炭、石油、天然ガスといった化石燃料を大量に消費してきました。その結果、大気中の温室効果ガスの濃度が急上昇し、地球は必要以上に熱を蓄え込んでしまっています。
冬にコートを何枚も重ね着すれば体温が上がりすぎるのと同じように、地球もまた「オーバーヒート」の状態に陥っているのです。これが地球温暖化の本質です。
2. プラスチックは「固形の化石燃料」であるという事実
プラスチックと地球温暖化がなぜ結びつくのか。その最大の理由は、プラスチックの原料にあります。
【世界のプラスチック消費量の推移】

焼却処分によるCO2の大量排出
vol.2で解説した通り、プラスチックの主原料は石油です。つまり、プラスチックは形状を変えた「石油の塊」=固形の化石燃料と言い換えることができます。
日本では、廃棄されたプラスチックの多くが焼却処理されています。この際、プラスチックに含まれる炭素が酸素と結合し、大量の二酸化炭素(CO2)として大気中に放出されます。 現在、水蒸気を除く温室効果ガスのうち、約9割がCO2であり、プラスチックの焼却はこの数値を押し上げる大きな要因となっています。
ライフサイクル全体で見る気候変動への影響
プラスチックの影響は「捨てる時」だけではありません。
1.原料抽出:石油を採掘・精製する段階でのエネルギー消費。
2.製造:プラスチック製品へと成形する工場でのエネルギー消費。
3.輸送:製品を世界中に運ぶトラックや船からの排ガス。
4.廃棄:焼却時のCO2排出。
このように、プラスチックはその生涯(ライフサイクル)を通じて常に温暖化を加速させています。世界中でプラスチックの消費量が増え続けることは、それだけ地球温暖化の解決を遠ざけることにつながるのです。
3. パリ協定と「1.5℃目標」の切迫性
2015年に採択された「パリ協定」は、世界の気候変動対策における歴史的な転換点となりました。ここでは、産業革命前からの気温上昇を「2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求する」という目標が掲げられました。
なぜ「2℃」ではなく「1.5℃」なのか?
当初は2℃の上昇でも許容範囲と考えられていましたが、近年の科学的な研究により、0.5℃の差がもたらす結末には決定的な違いがあることが判明しました。
もし、気温上昇が1.5℃ではなく2℃に達してしまった場合、以下のような甚大な被害が予測されています。
・サンゴ礁の絶滅:1.5℃上昇で70〜90%が減少しますが、2℃上昇では99%以上が消滅します。海のエコシステムが崩壊します。
・永久凍土の融解:2℃上昇の場合、1.5℃上昇時と比較して日本の国土の4〜7倍に相当する面積の永久凍土が溶け出し、さらに大量のメタンガス(強力な温室効果ガス)が放出されるという悪循環を招きます。
・極端な気象:洪水、干ばつ、猛暑の頻度が劇的に高まり、農作物の収穫量が減少。世界的な食料不足と経済的な混乱が生じます。
【世界の平均気温の変化】

[Image comparing 1.5 degree vs 2 degree global warming impacts]
IPCCの警告:疑う余地のない人間活動の影響
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の最新の報告書では、世界の平均気温はすでに約1.1℃上昇していると指摘されています。そして、この温暖化は「人間活動の結果であることに疑う余地はない」と断言されました。
もはや「自然のサイクルだ」という言い逃れはできません。私たちがプラスチックを使い、化石燃料を燃やし続けていることが、直接的に地球の首を絞めているのです。
4. 2050年カーボンニュートラルへの道のり
1.5℃目標を達成するためには、2030年までにCO2排出量をほぼ半減させ、2050年頃には「実質ゼロ(カーボンニュートラル)」を実現しなければならないとされています。
カーボンニュートラルとは何か?
排出したCO2の量と、森林などが吸収したCO2の量を差し引きゼロにすることを指します。しかし、現在の排出量は吸収量を遥かに上回っているため、まずは排出量そのものを徹底的に減らすことが不可欠です。
脱プラスチックと脱炭素の融合
プラスチック削減は、単なるゴミ問題の解決ではなく、このカーボンニュートラル達成に向けた「脱炭素戦略」の柱です。
・バイオマスプラスチックへの転換:植物由来の原料に切り替えることで、焼却しても大気中のCO2を増やさない(カーボンニュートラル)仕組みへの移行。
・サーキュラーエコノミーの構築:一度作ったプラスチックを燃やさず、何度も使い続けることで新規の石油使用と焼却を抑制。
5. 名古屋市の現状と私たちにできるアクション
名古屋市は「プラスチック削減方針」を掲げ、2050年の脱炭素社会実現に向けて先導的な役割を果たそうとしています。しかし、行政の仕組みだけでは不十分です。最大の鍵を握るのは、私たち一人ひとりの「行動変化」です。
今すぐ始められる4つの「脱プラスチック」
1.リデュース(発生抑制)の徹底 レジ袋、ストロー、使い捨てスプーン、ペットボトル。「本当に必要か?」を常に自問自答し、断る勇気を持つことが最も効果的な温暖化対策です。
2.プラスチックの「長期利用」 使い捨てを避け、タッパーやマイボトルなど、長く使える製品を選び、大切に使い続けること。
3.分別の精度を上げる 「汚れたプラスチック」は焼却(CO2排出)に回されますが、きれいに洗って分別すれば「マテリアルリサイクル(再資源化)」が可能になり、焼却による排出を抑えられます。
4.再エネ・省エネとの組み合わせ プラスチック削減と併せて、自宅の電気を再生可能エネルギーに切り替える、公共交通機関を利用するといった行動が、1.5℃目標達成への相乗効果を生みます。
6. まとめ:次世代に先送りできない責任
地球温暖化の影響は、今この瞬間も進行しています。大型台風による水害や、これまでにない猛暑は、地球からの明確な警告です。気温上昇を1.5℃に抑えられるかどうかは、これからの10年間の私たちの行動にかかっています。
プラスチックを減らすことは、単に「環境に優しい」というレベルの話ではありません。私たちの生活、食料、そして子供たちの未来を守るための、具体的で切実な生存戦略なのです。
vol.4では、この大きな課題に対して、私たちの住む名古屋市の人々がどのように感じ、行動しているのか。市民アンケートの結果から見えてくるリアルな現状と課題について取り上げます。
引用元:名古屋市プラスチック削減方針~そのプラスチックは必要ですか?~ (本コラムは、名古屋市の公表資料に基づき、気候変動対策の重要性を広く伝えるために構成・執筆されています)

